2.『なかよし地獄学園』 |
「!!こっ…ここは…!」 車から降ろされた俺は、何故この車が地下・・・のように見える、この場所に来られたのかを疑う暇も無く、眼前の光景にただただ、目を見開くだけだった。 「で、あるからして・・・君達には健全な生活を送ってもらいたいと、つとに願うのである。そもそも、校風とは校内風紀に端を発し、また、校内風紀とは・・・」 外したヘッドホンからは、先ほどの耳障りな演説じみた説教が相も変わらず垂れ流されていたが、 それよりも俺は、眼前の・・・この洞窟、自然の洞窟にしては、いささか整い過ぎているこの空洞の中に立てられた 灰塗りの校舎に圧倒されていた。 俺は“それ”を見据えてゆっくりと呟く。 いささか年季の入っているこの建物、かなりの敷地面積を誇っていた。 ・・・ちょっと、先が見えない(色んな意味で)。 「見ての通り、刑務所よ。いや、少年院と言った方が聞こえは良くって?」 「・・・」 「あなたには、ここで生活して貰います。そして、ここにはあなたに負けず劣らずの問題児ばっかりよ。フフ、 まぁ、いずれ皆更正して貰う事になるのですけれどね・・・フフフ・・・」 冷多井は、そう冷たく言い放ち、髪を掻き上げる。さらさらと流れる彼女の黒髪が落ち着く頃には、俺の興奮も収まっていた。 「ふん、上等じゃないか。この俺様がこんなところで収まると思うなよ。なにせ、俺は・・・」 「ナンシー」 「Yes Boss」 そそくさと、ナンシーに指令を出すと、冷多井は車に乗り込み車のエンジンがかけられる。 「って人の話聞けよ!」 ・・・・・・。 ・・・・・・。 悔しさだけがこみ上げてくるのは気のせいだろうか? 「あ、そうそう」 車の窓を開け、眼鏡の縁をクイと上げながら冷多井は言う。 「直ぐに迎えが来るわ。心配しないで、そこに突っ立ってるといいわ」 「・・・・・・迎え?」 「ヘイ、ドッグ!!スーサイドアタック!!GO!!」 どかーーーん!! 「なっ…なんだ!?」 突然の叫び声と共に灰色の舎の中から、「犬」の様な物体が青い稲妻となってかっとんで来る。 @迎え撃つ A蹴散らす B叩きのめす とっさに俺の脳味噌のスーパーコンピュータがそろばんをはじく。 今日の俺はまるこめ味噌だ。迷わずCの『ホームラン』を選択した! 犬(?)が迫る! 俺はポケットから金属バットを取り出してフルスイングする!! ぐわきーん!! ジャストミートだ。角度、スピードとも申し分ない。 我ながらすばらしくチャンスに強いバッティングだった。ミラクルアゲインだった。 犬(かもしれない)生物は、結局最後までその種を特定されることなく、乙女座のスピカの住人となった。 「シィーーーーーット!!」 奥から忌々しそうに「男」が現れた。 「ユーが新しい『新入生』ネ…。噂どおりのバッドボーイだワ」 こいつは外人にしちゃあ服があまりにも日本風だ。 腰には刀が二本。ワラジに手っ甲。おまけに頭には「日本一」のはちまき。 典型的な「日本文化を誤解している外国人」だ。 「お前が『迎え』というヤツか。おいオカマ、ここはドコだ」 「失礼なボーイね。オカマじゃないのヨ。ワタシの名前は『ピーチ・タロウ』。 ここ『なかよし地獄学園』の教官にして正義と立法の味方ヨ。”アツイボーイ”、入所を歓迎するワ☆」 「随分な入学式だな」 「オホホ。お楽しみはこれからよ。食らえ!!吉備ボールアタック!!」 ぶぼん!! しまった! まだ奥義のダメージと例の説教のダメージが残っていたとは言え、不覚だった! まるで団子のような粘着質のボールが、いとも簡単に俺のガクランをはいでしまった。 「ヲホホホ!この原子力ポケット付きガクランは預かって置くわネ」 なんてことだ…。代々ご先祖様の体毛で編んだという、22世紀の「ガクラン」を奪われてしまった。 それにしても原子力だったのか…あれは。 「さあ…ユーの態度次第で、コレを燃やしてしまうこともあり得るのヨ」 「くっ…。そんなことしてみやがれ!ただじゃすまんぞ…」 と言いながら俺は、『それを燃やしたらすごいことになるんじゃないか』という意見が頭をかすめたが、 またこいつらのペースにはまってしまった事に変わりない。 ここは暗い校舎の中へ入っていく ピーチボーイと名乗るそいつの後に俺はついていくしかなかった。 薄暗く、じめじめした通路をそいつは迷いも無く歩いて行く。 静けさに耐えかねて俺は、オカマ野郎にこう聞いた。 「おい、オカマ。俺は何所に連れて行かれるんだ?」 「シャー−ーラップ。ユーの態度次第で大事なガクランを燃やすト言いましたネ−。駄菓子菓子、今日のミーは気分が良い。燃やすのは、後回しにしましょう。ユーは、とても楽しい所に行くのですよ…ここです!!」 眼前が突然開け、目に痛いほどの光りが差し込んで来た。 そこは、闘技場。 「ウェルカムツーアワ『なかよし地獄学園』!!ウィアーユーを歓迎しますよーv」 観客席は、冷多井とにたような制服を着た、男や女で埋め尽くされていた。 地を揺るがすような歓声が、(恐らく)俺に向けられている。 と、闘技場のまん中に、ピーチボーイに負けず劣らずの勘違い和服をまとった女がたっているのに気が付いた。 だらりの帯をまえにたらし、裾はケツが見えそうなほどに短く、しかも、15cmハイヒールだ。 「アイアム・ゲイシャガール!!ここでのユーの担当デース」 その、派手な、女が自己紹介する。俺は聞いて無いが。 「ユーには、ここで、その実力を皆に見せてもらいマース!まずは… …と言いたいところヤケど、ユーは何も手にしておらしまへんやんかー!」 下手くそな関西弁だな。いや、舞妓でも気にしているのか? 「またピーチは、武器庫に連れて行くのを忘れとるわ〜!シャーナイなー、ワシについてきてオクレなまし。」 「どうでもいいが、その関西弁やめた方がいいぞ」 「Oh!Sorry!ミーは時々こうなっちゃうのヨー!実は普通にしゃべれるけどネ。」 …いわゆる、感情の起伏が激しいというやつか。 そして、俺は武器庫に連れていかれた。 「観客は無視かよ!」 …どこかに三村がいるんだろうな。 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ 「闘技場内では、一人に一つ、武器が与られマース!それでは、衛兵サン、武器庫の扉を開けてくだサーイ!」 扉の前に立つ屈強そうな衛兵は、意外と普通の格好だった。武器の代わりに、はりせんを持ってる点以外は。 「毎度のことですが、中にある武器は、手に触れれば決定したとみなされますので、気をつけてくださいね。」 「ハーイ!」 俺達は中に入った。……あるある、たくさんの武器が。 剣に銃、槍、ヌンチャク……けん玉、水鉄砲、 水鉄砲? 「どれもこれも役立つモノばかりネー!見た目ではワカラナイけど、特殊装置があったりするネー!」 ………… とりあえず、普通にいくのが無難だな。 「漢の俺はやはり、拳で勝負。連戦に備えて拳を保護するナックルにしておくか……」 と思った瞬間、 ビィー!ビィー! 警報機が鳴り響いた。 「Oh!Sorry!またやってしまったがな!」 『また』か。前もしてたのだろうな。 ゲイシャガールは「あるもの」を手にしていた…… 「あれは・・・!ダイヤモンド、だ!?」 何故!?と思う俺の思考回路は、不意に寸断される。 「走るデース!!」 そして、ルパンルパ〜ン、な状況になっている俺達に容赦なく襲い掛かってくるトラップの嵐。俺はゲイシャガールに手を引かれ、 無理矢理にと走り出す羽目になった。 「うっ・・・うぉっ!!」 壁からのヤリ・・・は、不自然なまでに変形した姿勢でなおかつスピードを殺さずにかわす。 脱け出す際に衛兵をぶん殴るっておくのも忘れない。 「ぶぎゃっ」 蛙の潰れたような(?)声を出して衛兵は昏倒した。 たしか、衛兵はもう一人いたようだが・・・? ・・・いた。 落とし穴の中でワニの皆さんと仲良くやっているようだ。 彼の無事を祈りつつ、俺は通路を走りぬけて行く。 一方、ゲイシャガールはというと・・・ 持つ必要のないほどに短い裾は、彼女の手によってまくりあげられ、 ケツが丸見えになっていた。・・・正直、嬉しくない。 「何でそんなもん持ってんだお前!?しかもそんなもん何で」 武器庫にある、と言い終える前に今度は前方より飛んでくる、 矢。 俺は、持ち前の動体視力を駆使し、何とかそれを掴み取ると 両端を持って叩き折ってゲイシャガールに投げつけた。 「一体何が起きた。簡潔に説明しろ」 「ソーリィソリィ。このナックルは許可が必要なのをすっかり忘れるてたデース!でもこない綺麗なら、ミーがうっとりするのも、頷ける話デース」 奴の手には、ダイヤモンドがちりばめられたナックル、通称、ダイヤナックルが握られていた。 ダイヤの強度と、それに耐え得る素地で出来たグローブは、まさに最強にして最高価を誇る故、許可が必要なのもまぁ確かに、とも思うが、そんなもんその辺に置いとくな、とも思う。 「ユーの武器もこっち系統やがなー。これで、敵もイチコロやで」 「・・・・・・」 いらぬ御世話を。しかも、それは結果論であって、他の人物を担当したときも今のと 同じ目に会わせていたに違いない。 『まぁまぁ、ワシの受け持つユーが買ってくれればワシもうまい目見れるのデース!気にせんと受け取ルデース!』 ・・・ついでに、それが本音か。 「・・・・・・」 無言で俺はそれを受け取ると奴に控え室だという方向に案内された。 ガシャン! 『控え室』といえば聞こえは良いが、先ほどのコロシアムとくらべると恐ろしく汚いコンクリートの狭い部屋。 俺はゲイシャガールの横でパイプ椅子を蹴り飛ばした。 なんでこんなことになっているのだろうか。頭の中で状況を整理する。 「読者の為にもね」 「うるさい黙れこの脳味噌つるつる色きちガイ」 「ノオオー(ー∩ー)」 おれは『風紀委員・冷多井』の手によりこの『なかよし地獄学園』に送られた。 『ピーチボーイ』と、この『ゲイシャガール』という、日本文化を誤解した外人教官は先公兼マネージャーみたいなものだろうか。 その気になればスカッドミサイルも飛び出す俺の「激ガクラン」は奪われてしまった。 まずはそれを取り戻すのが当面の目的と考えねばなるまい。 ゲイシャガールが話し始めた。 「では今から行われるコロシアムのルールについて説明するデース」 「コロシアム?」 「そう、この学園を卒業する条件は2つ。『コロシアムで優勝する事』と『更正する事』デース。 コロシアムは一ヶ月に一度、行われマース。同時に『新入生』の公開リンチ場でもありマース。今日は丁度その日…。 アツイボーイ、いくらあなたでも、勝ち進むのは難しいでショウ…」 「そうかな…?俺より強いヤツなんてこの世にいやしないぜ」 「表の学園世界ではそうかもシレマセン…デモ、この裏の世界デハ、ドウデショウ…。」 「ほう…。じゃあ今日にでも『退院』してみせるさ…」 「病院送りになっていなければ、ネー」 そうはいったモノの、コロシアムで優勝しようと、奴らの言う『更正』など、たとえ百年経とうと俺には出来るわけがない。 幸い俺にはまだ「加速装置付き鉄下駄」と、さっき手に入れた「ダイヤナックル」という武器がある。 どうにかしてこれらを使って『ガクランを取り戻してからここを抜け出す』という構図が必要だ。 「いいことを教えてあげマース。今日のコロシアムの決勝の対戦相手は、『ピーチボーイ』デース☆」 ! そうか…。今日にもガクランは取り戻すチャンスがあるわけか…。 「でも彼には強力な『犬猿キジ召還術』がアリマース。ユーには勝てマセーン」 「そんな事はやってみればわかるだろうがこの脳味噌つるつるアバンギャルド」 「ノオオー(T□T)」 俺はある『計画』を胸にコロシアムへと向かっていった…。 「レッディ〜スエ〜ン、ジェントルメェ〜ン!!」 俺がコロシアムに姿を現した途端、タキシードを着た男がマイクを片手に絶叫し始めた。 辺りは観客が埋め尽くし、歓声をあげている。 ちッ、完全に見世物状態だ。 俺は右手にはめたダイヤナックルの感触を確かめながら、闘技場の中央へと足を進めた。 どうやら男は審判らしい。 こんな所にルールなどありはしないだろうから、おそらく形式だけだろう。 正面に視線を向け、俺は驚愕に目を見開いた。 「お前は!?」 「くくく・・・ッ復讐しに来たぜ?」 驚くべきことに、俺の前に立ちはだかったのは・・え〜と・・確か随分と最初の方で俺の最終奥義で吹っ飛ばされたモヒカンだった。 こんな短時間で地球に戻って来れたというのだろうか。 しかし、相手がこいつなら話は簡単だ。 俺は一度勝った相手に負けることなどありえない! 俺の余裕の表情に気がついたのだろうか、モヒカンは俺にわざと分かるようにため息をついてみせた。 「俺を以前の俺と思うんじゃないぜ・・・俺には「あの方」がついてるんだ」 「あの方だと?」 そいつがモヒカンを連れ戻す手助けをしたのか? 「それでは、殺合(しあい)開始!!」 俺たちの会話を無視して、審判が高らかに開始宣言をした・・・ 「勝者、熱井〜!」 審判の俺の勝利を告げる声が、闘技場内に響き渡る。 勝負は一瞬でついた。というより…いや、自分でも意外であった。 「タイム16秒!まさに秒殺!決まり技は…」 秒殺か…。だがしかし、あの試合でその言葉は適切であろうか? 「決まり技は、『猫だまし』〜!」 俺は基本的には何もしてない。 こちらに向かってきたモヒカンの動きを止め、ストレート(パンチ)でもかましてやるかと思っただけなのだが……モヒカンは、俺が猫だましをした瞬間、泡を吹いて倒れた。 俺の思う所、猫だましをした時に俺の最終奥義が頭をよぎったのだろう。いくら強がっても、体は恐怖で蝕まれているのだ。 ―しかし、『あの方』とは一体、誰だ?― ふと、モヒカン側の選手入場口から、去っていく人影が見えた。 「あいつか……」 モヒカンが瞬殺されたおかげで、出てくるタイミングを逃したのだろう…かわいそうなやつだ。 いや、しかし、アンドロメダ星雲まで吹き飛ばしたはずの人間を呼び戻す程の奴だ。 近いうちに会うことになるのは間違いない。 控え室に戻ると、ゲイシャガールが俺を出迎えた。 「ヨクやったネ!さすが、ミーの選んだダイヤナックルのおかげネ!」 ……こいつ、絶対試合を見てなかったな…。 なんとなく、ゲイシャガールの表情が少し固い。 さっきまで何をしていたのか、気になる…。 ここは、問い詰めるか?放っておくか? …もちろん放っておこう。 決して頭の良い俺ではないが、脳ミソが狂牛病(スポンジ)なヤツの行動をいちいち気にしているほどヒマでもない。 が… 「何してたんだ?勘違いジャパン2号…」もちろん1号はピーチボーイのことである。 …ツッコまずにはいられなかった… 「ナ、ナンノコトデスカ??」 マンガの様に動揺する勘違いジャパン2号…もといゲイシャガール 目は既に魚のマークになっている。 「惚けるな。今の試合、見てなかっただろ?」 「オーゥ!ニホンゴワカリマセーン」 お決まりの逃げだ… 俺は胸ぐらを掴んだ。 しかし女に手を上げる訳にはいかない…それに勝ち続ければいずれ分かる事だ。 「チッ…」 俺は手を離した。 「次の相手は誰だ?何分後に始まるんだ?」 「アイテはワカリマセ―ンが試合は1時間後デース。それまでは観戦でもしてるとイイデスネー。」 「…日本語わかってんじゃねーか!!」(←もちろん三村風) それから始った試合はしごく退屈な物だった。 勿論、俺の目からみればだ。 しかし、この闘技場、お祭気分に乗じて飲み物は勿論酒やタバコ、おまけに・・・何だあれは。白い粉まで売っているぞ。 ここは少年院じゃ・・・ 「あぁ、あれはソバ粉デース。エキサイトな気分をより」 ・・・お前には聞いてない。しかも、エキサイトな気分をよりデンジャラスに(予想)する粉なんて聞いた事もない。 つーか、お前何時まで俺と一緒にいるつもりだ。 「ミーは、ユーのセコン」 黙れ心を読むな。ともあれ、試合は順当に進んでいき、 1回戦の、ようやっと半分にまでこぎつけた。それにしても、長いな。 2回戦からは半分になるとは言え。 「おぉ・・・ようやく奴らが出るぞ・・・」 「俺もかけているんだ・・・これは損はしないだろう・・・」 急に周りがざわ・・・ざわ・・・と騒ぎ出した。 今日の目玉カード、と呼ばれている奴(ら?)の登場、らしかった。 周りの会話を聞くに、番長クラスの終結するこの学園でも、ランク付けと言う物が存在し、ここからのカードはそれら猛者達の終結するグループだという。 つまり、この俺とは準決勝あたりまでは当たらない、筈だ・・・と、思う。 それにしても賭けって・・・。 ・・・勢いつけて、片方の扉から前宙で現れた男は、赤髪を見事におったて、そう、まさに怒髪天を貫くと言った・・・感じな髪が特徴だった。 赤と黒を基調にした衣装に、メタリックな装飾を全身にちりばめて試合開始の位置につくこの男を、熱井は知っていた。 「辛井、あの野郎・・・最近見ないと思ったら、こんなトコにいやがったのか・・・」 男は、熱井と以前死闘を繰り広げた末に、学園の兵隊の自力で負けて敗れ去って行った辛井寿明(からい・としあき)その人だった。 「おぅ!熱井!こんなトコ来てまだそんなもンに頼ってンのか!?ここじゃ、コレだろ、コレ!!」 辛井は、熱井を目ざとく見つけると、ビシィッ!と指差してから 両の拳をばしばし、と叩きつけた。 因みに、コイツの得意技は蹴り技(激辛流蹴術)で、拳によるものではないと、付け足しておこう。 「おぅ!こんなモン必要無いぜ!」 熱井はダイアナックルを中空に舞わせると、虚空に向けて拳を数回叩きつけた。 ・・・ナックルは跡形もなくこなごなに吹き飛んだ。 「Σあァッ!!ミーのダイヤが・・・」 誰のダイヤだ。そうこうしている内に辛井の対戦相手が出てくる。 「フン・・・さぁ、相手は誰だッ!?」 相手のシルエットは、1、2・・・3人?!ちょっと待て!? 「一郎!」 「二郎!」 「サブミッション!」 名前、違うのかよ!(勿論三村だ) ・・・出て来た3人組は、なるほど三つ子らしく、 凶悪なツラ構えは3人とも同じ物を持っていて そのちびっこい背丈は3人が縦に並ぶ事により補っていた。 それぞれ、赤、緑、青とよろしくRGBを決め込んでいる服装だ。 ・・・何故か、熱井の頭に特戦隊という単語が浮かんだ。 「3人そろって!」 ・・・・・・。 ・・・・・・。 名前を考えてないらしかった。 (って、いいのかよ3人て!)(←懲りずに三村) 一郎「くっくっく…!辛井…おめえの名は聞いてるぜ…第二次…」 次郎「『第二次学園抗争』での活躍は有名だからなあ…。」 一郎「ぐおっ!次郎!てめえ!人のセリフをとるんじゃねえ!!だがな…」 サブミッション「だがな…それも『表』の世界での話だ。新参者のお前に『裏』での礼儀ってモンをたっぷりと教えてやるぜ」 一郎「くぉらァ!サブ!!人の会話に割り込むなあ!!」 俺は横のパープリンに聞く。 「おいパープリン…」 「このどあほうボーイぐわーーーーっっ!」 びしいっ! ゲイシャガールのビンタを難なく受け止めた。 「??なんなんだ?!パープリンがイヤなら土手かぼちゃはどうだ?」 「そんな事ヲ言ってるのではないネーーっ!!せっかく持ち出しに成功したダイヤナックルを粉々にしくさってからニーーーーっ!!」 「おれの拳より弱い武器などいらん」 「……」 「だから教えろ。3対1なんて認められるのか?」 「言ったはずネ…。コレは『新入生の公開リンチ』だと…。あの『田中三兄弟』は、普段は全く息が合ってないように見えて、戦闘では驚異的なコンビネーションを見せるネ。 そのポップな外見とは裏腹に、現段階でこの『なかよし地獄学園』のトップクラスの実力を持つヨ。『辛井』はユーの知り合いらしいデスガ、残念ながら『田中三兄弟』には勝てないでショウ…。」 俺の中では奴らの強さよりも、名前が『田中』だという事のほうが衝撃的だったが、 とにかくこの試合は見物の様だということなのだろう。 「おいおい!熱井!心配そうなツラァ向けるんじゃねえッ!10対1でも問題ねえッ! 俺様を誰だと思ってるんだ!!キサマの永遠のライバル、辛井様だぞッ!!」 試合場の辛井が俺を見て怒声を上げる。 周りの観客の視線が一斉にこちらに向けられて非常に迷惑だ。 こんなところで知り合いに出会って少しでも嬉しいと思った自分が情けない。 俺は関わり合いになりたくない。 「だまれ辛井、貴様をライバルに抜擢した覚えはない」 「がっはっはっは!!なら俺が師匠か?!」 ばんっと拳を打ち合わせて田中三兄弟に向き直る辛井。 だから拳は使わないんじゃなかったのかよ?!(例のアレつっこみ) 「死合・開始!!」 試合開始のドラが響いた。 |