全能者-THE FRAGMENT OF GOD-
「全能者」(ぜんのうしゃ)は32ページ読み切りバイオレンスサスペンスホラー! アシスタントの相方が就職してしまい、 僕一人で作った作品(笑)。 ええ粉まみれになってトーン貼りましたよ。カッターで2回ほど手を切りました。 1ヶ月たった今でもまだキズあります(笑)。 制作期間は13日間で、今までの作品の中で一番長いです。
■ストーリー:
現代の東京で、不可解な殺人事件が起こる! 二人の刑事が捜査線上に浮かび上がったある男を追う。 謎の怪死事件の影に目撃される男!果たして犯人はどうやって殺人を犯したのか?

32Pという読み切りで、どこまでサスペンスができるかな?と試みたシリアス漫画です。
あえて言うなら格好よさ追求型作品かも?
まずストーリーから考え始めたので、主要登場人物名を最後まで決められませんでした。 意外と出てきているのに名前さえ出てこない人物も(笑)。 実は刑事の名前はその時たまたまテレビでやってた鳥取県知事からとったりして(笑・おい。
いらないものをかなり排除したので、地味に見えるかもしれません。
どうか毛嫌いせずにみなさま、是非読んでみて下さい。賛否両論してもらえるのを楽しみにしております。

■『全能者』の裏話■
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表紙に名前も載ってるし、『21世紀ウルトラ漫画賞』のページにも全能者のタイトルページが使われてるし、
巻末アンケートのクイズにも『全能者』がネタになってるし、今回は言うことナシです( ̄ε ̄〜)
■キャラクター■
今回も夢で見た話から着想を得ています。(2002/5/3日記参照)
僕は面白い夢をメモって置く習性がありまして、その中からいろいろくっつけて味付けしたのがこの『全能者』です。
■逆十字
←左は夢で見たイメージをそのまま描いたもので、初期段階のデザインですが、 完成版の主人公は「神に背くものの象徴」とされる「逆十字」のネクタイとピアスを付けてます。
「神のカケラ」みたいな副題を付けて置いてどうしてそんなものを付けているかは読んでいただければわかると思いますが、
悪魔がもともと天使だった様に、神に背くもの=神の敵、というわけではない、
悪魔も天使も神も、人間を超越したモノという意味ではみんな同じ、という事を描きたかったんだと思います。
いつの間にか諸悪の根元みたいな扱いになってしまったあの悪名高い「サタン」でさえ、 もともとは「神の命令に従い人間に試練を与える従順な天使」だったそうです。
悪魔も実は神に逆らえていない生き物なんじゃないか、みたいな設定だったのかもしれません。
■コート
一見ほぼ同じデザインの『白砂村』主人公・大神のコートの襟は鉄板なのに対して、
この『全能者』主人公のコートの襟は、「FG」の文字をデザイン化しています。
「FG」は「FURAGMENT of GOD」の頭文字で、副題にもなってる『神のカケラ』のような意味です。
■○○を探せ!!

zen7.jpg 1・メジャーデビューを探せ!
今回もウルトラジャンプ作品に、僕の今まで描いた同人誌から沢山のキャラクターが再登場しております。
なにせ主人公が
現在続刊中の『白砂村』の主人公・大神
まんまですから(笑。
ちょっとコートが違うだけです。
副主人公(?)の女の子は『BLACK SPOT』のこれまた副主人公『カロメナ』ちゃんです。


2・エキストラを探せ!
…というわけで、恒例
『背景やエキストラにこっそり隠れている、僕の他の漫画のキャラクターを探せ!』笑

今回の『全能者』には…
@『リクワイヤー』に続いて『白砂村』からは産巣日(むすび)・佐野刑事・鹿屋野超空
A『侍ダイナマイト!』から、佐々木小次礼郎、
B『NEEDLESS』から、アダムN・マザーブラック・色即&是空
C『呪力戦隊リクワイヤー』から、上賀内城・ドクターピス・くま
D壁のグラフティの落書きで『NEEDLESS・ADAM』の文字
E『白砂村』から『1万円強奪事件・俊作・宮本おとね』の文字
F『白砂村一巻』と『テンプレート』
G『白砂村』から「月読・大神・安姫・佐野・こたつ」の文字

なんかが紛れ込んでいます!
みなさん僕の同人誌などを手に入れる機会があったら探してみてね!
というか買ってください(笑。


■『全能者』考察■

■「全能者」を描いた時、どんな事を考えてたのか文字にしてみました。
自分の考えをダラダラ書いたものですので偉そうだったり小難しかったりするかもしれないです。ごめんなさい。許してくださいまし。m(._.)m

【全能者が出来るまで】


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の作品は幸か不幸か、いつも手伝ってくれていたアシスタントがこの4月就職してしまい、ほぼすべて僕一人で仕上げた作品です(笑。
この作品は今までより書き込みで言えば密度は高いし、急ぎの原稿でもなかったので2週間かけて描きました。
間違いなくページ数から考えれば今までで一番時間を割いた作品です。
できあがってみたら『主人公の派手な動き』と、『ギャグ』という僕のふたつの武器を極限まで取り除いた作品に(笑。
読者様の目にはどう映るでしょうか…。
今まで今井神が描いたことのない類の新しい試み的作品として興味深く受け取ってもらえるかどうか…。

………


■1

分より絵の巧い方に「良い絵ですね」って誉められると
「ホントか?」と心のどこかで思ってしまうのは心がねじ曲がっているからですか(笑)?

たりまえの事ですが、小学校でも中学校でも、クラスに必ず僕より絵の巧い人がいました。
小学校の時の、「僕より絵の巧かった人」の一人は女の子。
初めてみる少女漫画のタッチ。
自分の今まで模写していたキン肉マンなんかとはまったく違う絵柄。
なのに明らかに僕より絵が巧いとわかる力量。

「劣等感」なんてみじんも感じない。
あるのは自分の力のなさに対する「申し訳なくてたまらないキモチ」。

その子が僕の最初の漫画の師匠でした。
けしてオタクっぽい子ではなく、明るくて背が高くて眼鏡もかけていない子で…、
…まあそんなことはどうでも良くて(笑、はじめて「かわいい女の子の絵を描きたい」と思った瞬間でした。


zen6.jpg ■2

どっかで
「誰でも1000ページ漫画描けば漫画家になれる」
って話を聞いたことがあって、
「とにかくデビュー出来るまでは数を描こう」って決めました。
悩んでる暇に原稿描きまくっていれば絵のクオリティーは自然についてくるだろうから、って。

そして、 実際やってみたら確かに今僕は漫画家に片足つっこんでますね(笑。

 小学校の時、ほとんどの友達が「じゆうちょう」を持っていた気がします。
誰もが絵を描いていたと思う。
でも高学年になるにつれ、それを持っている人はだんだん減ってゆき、みんな絵を描かなくなってしまいました。
最後まで自由帳を捨てず、絵を描き続けてきた自分は今、原稿用紙という自由帳にガリガリやってます。
良く「どうやったら絵が巧くなりますか?」
と聞かれます。
もちろんものすごく嬉しい質問なのだけど、困る。
僕は「才能があったわけじゃない。途中で止めなかっただけだ。」なんて思うのです。
「高校時代は1日10時間以上毎日なんかしら大学ノートという名の自由帳に絵描いてました」としか言えないデスヨ(笑
いつまで漫画家が続くかはわからないけど、悩むより先に、数描けばなんとかなる事を実感。

でもこれからは
「プロの漫画家が描いた同人誌として、『白砂村』が読まれるのか」
と思うと手を抜けない、という事に気づく。プライドでしょうか?
当たり前だけど、
「同人誌でしかできないことをやりながら、プロのクオリティを見せなきゃならないのだ」と。
「繊細な画面」と「描き込み不足」は紙一重だし、「荒々しい」と「雑」は紙一重だし、
 商業誌だと遠慮しちゃって出来ない試験的な表現とか意外とあるんだけど、あんまりひどいモノは皆さんに見せられないのだ、と。


zen.jpg ■3

れ以来、数々の女の子の絵を描いて、今じゃ女の子の絵の方が多く描いているけれど、
今までを振り返った時、なんか特に「少しでもかわいい絵を」とか「かっこよく描いてやろう」とかいう努力を全然してこなかったように思いました。
それを気づかせてくれたのは、ここ1年、インターネットを始めて、いろんな方々のサイトで見たCG。「なんてかわいい絵なんだ!なんて凝った絵なんだ!!」
もちろん十分承知してたはずなのに「世の中にはこんなに絵の巧い人がいっぱいいるんだ…。」と痛感。

「絵を描く事に一生懸命だったけど、一生懸命絵を描いてなかった」のかもしれない。
迷いのないセンスのあるぶっとい線。それが最初に僕の目指した絵柄。
だからこそ他人がビックリする様なペースで漫画が描けるのだが、結果として「よりよい表現」を生み出す推考時間をカットしていたのかもしれない。
ウルジャンの大暮先生にいただいた「絵柄が完成しきってしまって全体にかたい」みたいな批評はこの事だったのか、と始めて気づいたり。

怒る人もいるかもしれませんが「自分はなんて絵が下手なんだ!」これが今の心からのキモチです。
例えば『絵が綺麗なだけでつまんない作品描く漫画家になりたくない』、みたいな変なプライド持ってたからか、綺麗な絵を描く練習をするのを忘れてたかもしれない(笑。

れからは時間があれば少しは「よりかわいく描く」「よりかっこよく描く」みたいな「今よりもっと」という努力をしていかねばならないと思いました。
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そのためにまず太い線を一回細い線に意図的に変換してみようか?
描いたことのない構図に挑戦してみようか?
コマのひき方を変えてみようか?
「派手な戦闘」や「オーバーな動き」や「ギャグ」に依存することなく、面白い漫画は描けるだろうか?


そんな事を考えて描いたのが「全能者」なんです。
…というお話でした。
おわり




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